日本は世界を相手とした戦争に大敗した。
 惨々たる敗北である。広島、長崎には原子爆弾が落とされた。
 (栃木県宇都宮市の映画館「ヒカリ座」で、現在、1955年ベルリン国際映画祭、長編映画賞受賞の「ひろしま」を上映している。原爆投下直後を再現した映像はあまりに凄まじい。まぼろしの映画上映だというが、監督は関川秀雄、助監督は名匠、熊井啓である。)
 わが祖国日本は、もはや、本土を守る力はとうになかった。ついにというか、とうとうポツダム宣言となり、天皇は、それを受諾、降伏に到った。昭和20年(1945年)8月14日のことである。翌15日には天皇自身のラジオ放送があった。これは日本国史上初めての屈辱である。御前会議があり、天皇自ら決定した事柄である。
 それから、4ヵ月後、12月15日早くもGHQは「神道指令」を出している。占領軍による日本神道弾圧計画であることはいうまでもない。
 国家神道が侵略戦争を正当化したという理由である。
 翌、昭和21年、元旦(1946年)、天皇は人間宣言をされた。三島由紀夫「英霊の声」、「などてすめろぎは、人となりしか」となった。
 明治以降、戦前までの神道イデオロギーが否定され、国民は呆然自失の態となった。ダグラス・マッカーサーはその政策実施の当人にもかかわらず、日本人に与えたその影響の大きさに驚いたという。そして、彼はそれを精神的空白と表現した。
 それから、抜け目なく、その空白を埋めようと、ある宗教の布教を計画したという。そして、更にマッカーサーは真剣に天皇のキリスト教改宗を考えたのだという。
 雨後のタケノコのように、新興宗教が生まれ、それは当時、「神々のラッシュアワー」と呼ばれた。
 昭和21年(1946)年、2 月3日、全国の神社は「神道指令」によって、それぞれの独立した宗教法人たる神社となった。そのためこれを機会に神社の総意として、宗教法人「神社本庁」(東京、渋谷)が設立され、各都道府県には、それぞれを束ねる神社庁が置かれた。
 昭和23年(1948年)、別表神社というものが設置された。「別表神社」とは社格の大きな、別格扱いの神社をいうのだが、日光東照宮、日光二荒山神社はここに組み入れられることになる。
 ここからが「日光山」の大事件が起こる発端となっていく。
 東照宮の「七塔堂の所有」をめぐって東照宮と輪王寺が争う、いわゆる「神仏百年戦争」である。
 「神道指令」によって全国の神社は国家の管理からそれぞれの独立の宗教法人になったことはすでに書いた。そこで、神社の土地、建物などは、当然、所有権の転移手続き、登記の手続きを行わなければならなくなったのである。
 昭和28、9年頃、神社本庁は全国の神社に、いまだに、そのままになっている境内や建物について、速やかに、登記手続きをするように通達する。
 東照宮は昭和29年3 月、宗教法人として知事の認証を受けた。
 同年6月に登記手続きを開始した。
 ところがである。輪王寺が出し抜くように東照宮の建物、七堂塔の登記の手続きを完了させてしまったのである。
 これではおさまらない。一気に対立が表面化する。そして、裁判闘争となる。
 これが、「神仏百年戦争」といわれた争いの中身である。
 大和飛鳥時代、日本に仏教が伝えられた遠い昔の時代、日本の神々は、仏を日本に迎え入れた。それは素晴らしいこととされた。
 当時の日本の最高トップ用明天皇は神と仏についてこういっている。
 「神をうやまい、仏を信ず」と。
 これは「記紀万葉」の中の日本書紀の中にある、用明天皇の段に記されていることばである。
 神と仏があい争う、普通の日本人なら、一体全体、何がなんだか理由がわからない事柄だ。
 
 この「神仏百年戦争」当時、足掛け10年間、この事件に直接かかわり、「東照宮戦後史の数少ない生き証人」まさに渦中の人、東照宮の宮司が語った生々しい問題の書がある。JAF MATE社出版の「日光東照宮 語りつぐ」(稲葉久雄著)だ。
 まさしく正論を書いておられる。 
 「本来、堂塔というものは神様や仏様のものであり社寺のものではありません。とくに二社一寺の建造物は、この日光山に存在を有しているのです。・・・・・・日光山に存在する建造物は全体として考えてはじめて意味のあるものなのです。」
 「最高裁の堂塔の帰属問題について明確に白黒をつけることは必ずしも、問題の解決にならず、かえって当事者間の溝を深めることになりかねません。」
 「二社一寺がともに仲良く力を合せて三本の矢となり世界の宝物日光山を護っていくことを念願しています。」
 
 そして、日光東照宮は、全国八万社を支配包括する宗教法人「神社本庁」からの離脱へと、大胆にも足を踏み出すのである。
 「天照」(アマテル)に対する「東照」(ヒガシテル)東照大権現の矜持と誇りを持って。
稲荷川  DSCN0060

  
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